第一章・運命という名の出会い


いつまでも、ここに居られない
数歩でもいい、せめて歩き出して

8、開始


アルたちが、コンピュータ室で待機し始めたその頃。
ファリンは、ジークに言われたとおりに(もちろん、普通に階段で)
1階のリビングに向かっているところだった。

(・・・正直、何も起こらなければいいのですけど)

ファリンは、階段を下りながら、そんなことを考える。
だが、あのジークが言うのだから、きっと何かが起こるのだろう。
取り合えず、緊張の糸を解かないようにしつつ、ファリンは
最後の1段に足をつけた。
それと同時に。


ピンポーン。


部屋の中に、何とも間の抜けたチャイムの音が。
こんな時に、何なのだろう。

(まさか、さすがの近所迷惑に、警察が来ちゃったなんて・・・ことは)

あまり、考えたくない。

ファリンは、ため息をつきそうになりながら
玄関に辿り着いてドアノブに手をかけた。

「はい?」
「クローディア・ラッガーナを出して欲しい」

ドアを開けて早々訪問者が放った言葉に、
ファリンは少なからずとも驚愕した。
目の前に立っていたのは、赤髪の男。
黒いコートを着込み、長剣を持っているこの男は
あまり、クローの味方とは思えない。

「・・・どちら様でしょうか?こちらには、
そのような方はいらっしゃってませんが」

ファリンは、極力表情に出さないように努めながら言う。

「・・・隠し立てはしないほうがいい。
ここにクローディア・ラッガーナが居ることは
既に知らされている」
「何かの勘違いでしょう。・・・さぁ、お引取りを」

ファリンは、にっこりと笑って言った。
直感ではあるが、この男にクローを渡してはいけないと感じていた。
だが。

(そろそろ限界、ですかね・・・)

ファリンと男との間に、ピリピリとした空気が漂い始めている。
すると、今まであまり動かないで居た男の動きが、変わった。

「・・・そうか、仕方ない。
ならば・・・無理にでも通らせてもらおう」

男はそう言うと、腰の剣に手をかけ、勢い良く抜いた。
ファリンが驚愕しつつも、戦いの体勢に備えた、その時。


ガガガガガッ!!!


ファリンと男の間に、何かが横並びに降ってきた。
どうやらそれは、鉄製の槍のようだ。

・・・というか、危ない。

2人ともその有様に、暫く呆けていたが
ファリンは突然何かを思い出したかのように
はっとすると、男の方を気にしつつも部屋の奥に向かっていった。



その頃、ジークはというと。
ジークはメイン室に仕掛けてあった梯子を下り終え、
地下の薄暗い部屋に辿り着いていた。
ちなみに、ここがアルが言っていた謎の部屋で、
ジークは、アルたちとは逆の部屋に到着したことになる。

ジークは薄暗かった部屋に明かりを灯すと、
遠くに向かって声を発した。

「今日も賑やかですね〜、お元気そうでなりよりです」

・・・まぁ、もっともその声が彼らに届いているのか
どうかは定かではないが。
何しろ、十数人がジークに向かってぎゃあぎゃあ喚いているのだから。
仕方ない、とジークは彼らに近づいていく。

「そんなに騒いだって、仕方ないでしょうに・・・。
バルドさん、皆さんに静かにしないと大変なことに
なると言ってくださいな☆」

ジークは、ここ3日間でちゃっかり入手した(?)彼らの
リーダーの名前を出して、にっこり笑って言った。
・・・そう、ここは3日前にクローを追いかけてきた男たちを
2階の罠で落とした場所。
ジーク曰く、「反省部屋」だ。
男たちは、さっと青ざめてバルドに言われるまでも無く
皆口を閉ざした。
表情だけは悔しさを滲ませて。

「まぁ・・・、あなたたちが知っている情報を
全てお話いただけたら、ここから出してあげても良いですよ」
「・・・どんな情報だ」
「そうですねぇ、例えば・・・あなたたちを裏で操っているのは誰だ、とか?」

ジークの提案に男たちは一瞬驚いて顔を見合わせたが、
直ぐに皆そろって、ニヤリと笑い始めた。

「その提案・・・のってもいいぜ。
ただし、俺らをここから出してからだ」
「それは、不公平だと思いますけど・・・
まぁ、良いですよ。出してあげましょう」

ジークにしては妙にあっさりと、にっこり承諾すると
ポケットから鍵を取り出して、鍵穴に差し込んだ。
がちゃり、と音がする。

「さぁ、話を聞かせていただきますよ?」

ジークが鍵をクルクル回しながら尋ねると、
男たちは扉から数人ずつ出てきて、ジークを取り囲んだ。

「あぁ、いいぜ・・・。
答えるのは死体のお前に向かってだかな!!」

そう叫んだバルドを筆頭に、男たちは次々にジークに襲いかかってきた。
そんな最悪な状況の中、ジークはいつも通り微笑んで呟いた。

「全く・・・仕方の無い人たちですねぇ」

そう言って、壁に手を伸ばした。





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