第一章・運命という名の出会い


前を見られなくても、
私にも戦うことは、許されますか?

7、きっかけ


「ただいまっ!!」

アルが2階のドアを勢いよく開けると、事務所の中は
警告音がやかましく鳴り響いていた。

「アル君、クローちゃん、お帰りなさい」
「ただいま、です・・・」
「ただいま・・・っていうか、何で2人とも
そんなに落ち着いているんだよ?」

事務所の雰囲気が、あまりにも落ち着いているので
アルもクローも、ちょっと動揺する。
ファリンなんて、警告音を鳴らすベルを、普通に切っちゃったりしている。
(というか、ベルなんて鳴らしたら、どう考えても
近所迷惑だ、とアルは思っていたりする)

「何か緊急事態じゃないのかよ?」
「いえ、全然」
「?」
「あれですよ、昨日のお客様が暴れてるだけです」

昨日の・・・あぁ、あれか。
アルは、(ジークに)地下に落とされていった
男たちのことを思い出した。
確かに、奴らならそろそろ暴れだしても可笑しくは無い。

でも、だ。

「そんなことで警報鳴らすなよ・・・」
「ははは、すみません。
とはいえ、何が起こるか分かりませんから、
アル君、クローさんを連れて奥へ行っていてください」
「・・・はいはい。クロー、こっち来て」
「え、あ、うん・・・」

アルは、ジークがひらひらと手を振るのを
横目に見ながら、クローの手を引いて1階へ降りていった。


アルたちの姿が見えなくなって、数分後。

「・・・今から、何か起こるのですか?」
「どうしてそう思うんです?」
「緊迫した雰囲気を、感じます」

ファリンが、少し緊張した声で言うと
ジークは、いつもの笑顔を崩さずに伝えた。

「大丈夫ですよ、大したことじゃありません。
ただ、いつもと違うものが来るだけで」
「・・・違うもの、ですか?」
「ファリンにもいずれ分かりますよ」

ジークは喋りながら、メイン室の床板を剥がし始めた。
剥がれた所から現れたのは、下に下りる梯子。
ファリンは、呆気に取られた。
まだそんなところにも、仕掛けがあったのか。

「僕はちょっくらお客様を宥めてきますね。
ファリンは1階で待機していてください」
「・・・そこから行くんですか」
「ここから、です」

至極真面目に言うジークを見て、ファリンは噴出しそうに
なりながら答えた。

「了解です。くれぐれも、お気をつけて」
「ファリンも、気を抜かないようにね」
「はい」

ジークが、梯子を伝って下へ降りていくのを
見届けた後、ファリンも自分の役割を果たす為に
メイン室を出て行った。




その頃。

「アル・・・、ここって何?」

クローは、アルに連れて行かれた部屋を見回して、
思わず呟いた。
クローが不思議に思うのも無理は無い。
アルたちが今居るところは、コンピュータや大きい柱時計や
はたまた人形まで、色んなものが置いてある、謎の部屋だからだ。

「・・・俺も説明しにくい。
一応、コンピュータ室ってことになってる。
まぁ、何でも揃ってるっちゃ、揃ってると思うけど」

アルはそう言うと、部屋の中をぐるりと見回した。

「・・・ちなみに、さっき通ってきた方の反対側にも
道があっただろ?」
「う、うん」

アルたちは、1階の玄関から入ってまっすぐ進んだ
所にある階段を下って、左右に分かれている道の左側を使ってこの場所に来ていた。

「あの右側の部屋・・・、ジークの謎の部屋でさ。
ドア開けた内側に、またドアがあって「入るな、危険」って」
「・・・アルは、入ったの?」
「・・・入ったら、どうなると思う?」

クローの質問に質問で返したアルは、
「・・・えへへ?」と笑いで誤魔化すクローを見て、
とりあえず、笑い返しておいた。

2人とも、分かっている。
ジークの部屋に入ったら、何が起こるか。
詳しいことは知らないが、少なくとも罠は降ってくる。
それも、ジークの趣味が入ってそうな、嫌ーな感じのものが。
絶対。

「こ、此処は何が入ってるの?」
「あぁ、そこは・・・」

クローが慌てて出してきた話題に、アルが答えようと
思った、その時。



何かが落ちる、音がした。





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