第一章・運命という名の出会い


あなたが願うから私は、
きっと今もここに存在していられるのだろう

3、逆転勝利?


「な、何だ!?」

1階からの爆発音にアルは驚愕の声を上げた。

「おそらく、先ほど彼女を追いかけてきた輩でしょう。
思ったより早くいらっしゃいましたねぇ」
「・・・そう言う割には、
偉くのほほんとしてるじゃねぇかよ」

一大事じゃねぇのか、とアルはジークを軽く睨みつける。

「人生の中にはどうにかできることと
どうにもできないことがあります」
「語るなっ!!」
「・・・あ、あの」

アルがぎゃいぎゃいと喚いている所へ、クローの焦った声が
飛び込んできた。

「わ、私やっぱり出て行くっ・・・」
「・・・ば、馬鹿!!何言ってるんだよ!!」
「だってこのままじゃ、あなた達に怪我させちゃうかも
しれないし、それに・・・危険だもの!!」
「だからって・・・!!」
「はいはい、2人とも落ち着いて」

ファリンが中に入って、アルとクローの会話を止めさせる。
その様子をのんびり見ながらジークが言った。

「アル君、何か忘れていませんか?」
「・・・は?何を・・・」

ファリンもアルのぽかんとした顔を見て苦笑しながら言った。

「所長、この建物にいくつ罠を仕掛けてると思ってる?」
「・・・あ」

アルは、そういえばこの男は建物の至る所に罠を仕掛ける
変な男だと言うことを思い出した。
アルが事務所と関係ない人物だったら、怪我どころじゃ
すまなかったかもしれない、多分。

「準備は万全ですよ。その証拠に、これだけ話をしていても
誰もやって来ないじゃないですか」
「そ、そういえば・・・」
「2階からやって来ている人たちも、今頃悲鳴を
あげているんじゃないですか?」

ジークがそんなことを言っている正にその時、どかーんという
音と、奴らの言葉にならない悲鳴が聞こえてきた。

「ドアを破壊した罪は重いですよ・・・」

ふふふ、と黒い笑みを浮かべてジークは紅茶を飲み干した。
カップを持っていない方の手には、何故かリモコンが。

「・・・ねぇ、あの人、何者?」

流石のクローも、逃げるなんていう状況も忘れて、
アルにこそこそと耳打ちした。

「・・・事務所の所長で、変わり者」

ジークのことをまとめて言うと、こんな感じだろう。
まぁ、彼が変わり者という言葉でまとめてしまっていいのか
どうかは微妙だが。

それにしても、さっきから気になるこの音。

どかーん、どっかーん。

「・・・なぁ、何か音近くねぇか?」
「気のせいですよ」

どかーんっ、どっかーん!!

「どう考えても音が近けぇだろうが!!
廊下の方で、何かが吹っ飛んだ音がしたぞ!!」
「気のせい気のせい」
「自分で建物壊してたら意味無ぇだろ」
「あの人たちも派手にやってくれますねぇ、
後で弁償させないと」

「おい、てめぇ」

一体普段どんだけ物仕掛けてんだ、といつになっても
終わらない会話にアルがジークに掴みかかったその時。

ばたんっ!!

「ここが最後の部屋だ!!いいかお前ら、ここを隈なく
調べろ・・・」

ドアを派手に蹴り飛ばした隊長が、部下と共に呆然と突っ立っていた。
(この時点で、部下は数人しか残っていない)
アルたちはアルたちで、意外にタフな彼らにぽかんとしつつも、
感心した。

「・・・おい、あの罠から生き残った奴らが居るぞ」
「凄いですね、あんなに音も悲鳴も聞こえたのに」
「もしかしてオーバーに騒いだだけだったりして」

「うるせぇよ!!余計なお世話だ!!」

アルたちの突っ込みに隊長は一声吠えた後、びしっと
指差して言った。

(※人を指差してはいけません)

「そもそもそこの小娘がとっとと捕まってくれねぇから
こんな目にあってるんだろうがよ!!」
「・・・だって、あなたたち、ドジだし」
「黙れや、ボケェ!!」

もう、何の話なんだか分からない。

アルがため息をつくと、ジークがにっこり笑って奴らに
手を振っている。

何する気だよ、と思わずアルは突っ込みそうになった。
(今のジークの顔は、何かを楽しみにしている顔)
そして手には、先ほどのリモコン。

ま さ か 。

「な、何手振ってやがんだよ・・・」
「アディオス☆」

ぽち。がこん。

「「―――――――――っ!?」」

ジークがリモコンを押した途端、男たちが立っていた床が抜け、
男たちは見事にひゅるひゅると落っこちていった。

「くそーっ!!おーぼえーてーろー・・・」

隊長の悔し紛れの捨て台詞を残し、男たちは一人残らず
床の下の世界に吸い込まれていった。

「・・・所長、こんな所にも仕掛けてたんですね、罠」

ファリンが呆れたように呟く。

「だから言ったでしょう、準備は万全だと」

そんなの楽しそうに言われても嬉しくも何ともねぇよ。

戦いもせずに敵を捕らえてしまったジークに対して、
アルたちは同じようなことを思った。



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