第一章・運命という名の出会い


同じようで同じじゃないなんて、
どうして気づいてしまったんだろう

2、騒動


足音が聞こえた途端、少女は走り出そうと試みるが、
後ろからも足音が聞こえてくるのが分かって、
アルの所まで戻って来てしまった。
じりじりと近づいてくる足音の持ち主は、
アルたちを取り囲むようにしてようやく立ち止まった。

「見つけたぜぇ、お嬢さんよぉ。
散々逃げやがって、見つけ出すのに苦労したぜ?」
「・・・」

少女は、話し出した男(この集団のリーダーだろうか?)を
無言で睨みつけた。
だが、震えている少女を見たアルは、何となくピンと来るものが
あった。

(こいつら・・・この子を狙ってる?)

「いい加減、鬼ごっこは止めにしねぇかい?」
「・・・う、うるさいわね!!
あんた達なんかに用は無いって言ってるじゃない!!」
「お嬢さんには無くてもこっちにはあるんだよ」

残念ながらな、と男はニヤリと笑った。

「兄ちゃんも運が無ぇな。こんなことに巻き込まれちまってよ」
「・・・どうかな」

アルは取りあえず、男の言葉に愛想笑いを浮かべておいた。
それにしても・・・これはあまり良い状況じゃないな、と
アルは心の中で思った。
さて、どうやってここから彼女を連れて抜け出そうかと
目線を他へ逸らした時、男の酷い言葉が耳に飛び込んできた。

「・・・ったくよ、王様も何でこいつなんか連れて来いって
言う命令を遣すのかねぇ。”災いの娘”なんか手に入れても
何の得もないだろうによぉ!!」

男の発言に周りの男たちもげらげらと笑い出す。
少女は声も出ないようで、爪を血が出るほどに手のひらに食い込ませていた。
アルは、男が言っていた”災いの娘”と言う単語も気になったが、
それよりも先に手が動いていた。

バキッ!!

「うぎゃぁぁぁ!!!」
「隊長!!」「大丈夫ですか!!」

吹っ飛ばされた男(=隊長)に男たちが駆け寄る。
本当はその場からすぐに逃げるべきなのだが、アルは
あまりにも怒っていた。
だから、一言言ってやった。

「誰にだって生きる権利はあるんだ!!この子を物みたいに
言うな、バーカ!!」

少女が一瞬、目を見開いた気がした。
アルは、少女の手を取ると、今度こそその場から逃げ出した。

「・・・ちょ、ちょっと待って!!」
「? どした?」

一応走る足は止めずに、アルは少女の言葉を聞いた。

「助けてくれてありがたいけど・・・、これ以上迷惑は
かけられない!!私のことはいいから先に行って!!」
少女はそう言って、アルの手を振り解こうとする。
だが、アルは違った。

「そういう訳にはいかねぇって」
「!? ど、どうして!?」
「もう十分関わっちまってる!!」

そう笑って言うと、少女の手を握り直した。

「多分、さっきの奴らには俺も仲間だと思われただろうしさ」
「そ、そうかもしれないけど・・・」
「それに俺、困っている人をほっとけないみたいでさ」

まぁ、それはおせっかいに近いものかもしれないけれど。

「あんた、名前は?俺は、アルヴィーン・レドラスって言うんだ」
「ク、クローディア・・・、クローディア・ラッガーナ」
「よし、行こうぜ!!」

アルの言葉に多少今までの気が緩んだのか、
クローがようやく微笑んだように見えた。
アルたちは、市場にいる人たちの間を上手く通りながら、
ジークたちのいる事務所に急いだ。



「アル君、遅いですね―――・・・」

ファリンが、カップや皿を片付けながら言う。

「何処かで寄り道でもしているんじゃないですか?」
「所長じゃ有るまいし、そんなことないですよ」

ジークがにっこり笑って言った言葉に、ファリンが鋭く突っ込む。
それでも、ジークは全然懲りた様子が無い。

「まぁ、そろそろ帰ってきますよ。多分、一人のお客様を連れてね」
「え・・・?」

ファリンが疑問の言葉を投げかけた時、1階からドタバタと
慌てたような音が聞こえてきた。

ドタドタ、バタンッ!!

「ほら、帰ってきた」

ジークとファリンがドアのほうに目を向けると、ものすごい
勢いでドアを開けたアルと、一緒に部屋に飛び込んできた
クローが息を落ち着けている所だった。
とりあえず、2人はアルたちが落ち着くのを待ってみる。

顔を上げたアルの第一声。

「ジーク、頼みがある!!」
「駄目です」
「何でだよ!!」

早っ!!とこの場に居た誰もがジークを見てそう思った。
だが、ジークはあくまでマイペースにのほほんと答える。

「まずは、彼女のことを紹介していただかないと」

アルは、はっとしてクローを見た。
そうだった、依頼の前には情報収集だった。
あまりにも慌てていて、彼女の名前以外、そういえば
何も聞いていなかった。

「彼女は、クロー。
何か追われてるみたいだったから、助けてここまで連れてきたんだけど・・・」
「クローディア・ラッガーナです」

クローが慌ててぺこりとお辞儀をした。
ジークがそれににっこりと対応すると、クローに向かって
質問を投げかけた。

「で、あなたは何故追われているのですか?」
「・・・」

クローは言いづらそうにジークから視線を逸らした。

「まぁ、言いたくなければそれでも良いのですが。
でもこちらも情報が少ない状態では、あなたを助けることが
難しくなります」
「・・・助けて、くれるんですか?」
「依頼とあれば、ですね」

クローの不安そうな顔が、少しずつ薄らいでいった。
こういう時、ジークは流石だなとアルは思う。
(本当はあまり思いたくないが)

そこで、ジークが外に顔を向けたので、アルは不思議に思って聞いた。

「ジーク?」
「どうやら、あまり話を聞いている場合では無さそうですね・・・」

さて、どうしましょうか?とジークが呟いた所で、
1階のドアが破壊される音が響いた。



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