第一章・運命という名の出会い


彼や彼女が教えてくれる
私の、進むべき道を

12、光と影


「うわぁ・・・凄い」

クローは窓の外を見て、1人呟いた。
でもそれは、アルも一緒の様で。
窓にへばりつく様にして外を見ている2人を見て、
ジークは1人こっそり微笑んでいた。

アルたち一行は、現在『アムーゼル』という町へ
汽車で向かっているところだ。
『アムーゼル』は、『カサロ』から近い賑やかな町で、
道具屋・雑貨屋が豊富である。
『カサロ』を早々に出てきたので、ここで足りない物を
補おうと考えているらしい。

「汽車に乗ったのは、初めてですか?」
「はい!!もう楽しくて・・・」

クローは、うきうきとして答えた。
『カサロ』にいた時より、元気そうだ。
これが、本当のクローの姿なのかもしれない。

「あ、そうだ、私の旅の目的ですよね・・・」

クローは突然思い出したように、ぱっと車内に視線を戻した。
そして、口に指を当てて、考える様子を見せた。
何から話すか、迷っているようだ。
やがて話がまとまったのか、少しずつ語りはじめた。

「私が『シオン・リコーデ』に向かうのは・・・、
人探しをしているからです」
「人探し?」

アルの質問に、クローがこくんと頷く。

「私の、大切な人です・・・。
ある人に、そこに向かえと示されました。
たどり着ければ、必ず出会えるからと」
「大切な人・・・。
良いですねぇ〜、そういう方がいらっしゃるというのは」

ジークの言葉に、アルは顎に当てていた手を
ずるっとずらした。
お前のは、ただの興味本位だろ、と思いつつクローを
見ると、少し暗い顔をしているようだった。

それは、大切な人に会える期待感とか、幸せじゃなくて。
何か、もっと別のものが。


「クロー・・・?」

アルが話しかけると、クローは気づいたように顔を上げた。
それは、先ほど汽車に乗った時と同じ表情で。
クローは「何でもないの」と言うと、続きを話し始めた。

「ただ、肝心の『シオン・リコーデ』が何処にあるのか
分からなくて・・・。
色んな人から話を聞くうちに、ジークさんたちの所に
たどり着いたんです」
「ある人、という方は場所については、何も
仰らなかったんですか?」
「はい。西にあると言うだけ言って、優雅に去って行きました」

ゆ、優雅にって・・・。
アルは、そのマイペースさが、身近にいる奴に
妙に見ているなと感じた。
それが誰なのかは・・・、あえて言わないが。

「では・・・、あなたが『マロークス』に追われている理由は、
何なのでしょうか?」
「・・・それは・・・」

クローは言いづらそうに、一瞬言葉を止めた。

「私が、妙な力を持っているから、です」
「妙・・・な?」
「ごめんなさい」

クローは突然そう言うと、ジークに断りを入れて
席を立って行ってしまった。
まだ完全に、アルたちに心を開いてくれていないのだろうか。

「結構、複雑なんだろうな・・・」
「そうでしょうねぇ。
そうでなければ、噂で聞いていたとはいえ
初対面の私たちに頼る必要がないでしょう」
「?」
「身近な人に頼れば良い、という話ですよ」

分かっていなさそうな顔をしているアルに、
ジークはそう伝える。
確かに、そうだ。
何故、噂で聞いていたとはいえ、クローは
あえてアルたちの何でも屋を頼ってきたのだろうか。
噂なら、他にもあっただろうに。

「まぁ、大丈夫でしょうけどね」
「・・・そうか?」
「自信がないんですか?大丈夫ですよ。
クローさんが僕たちを選んでくださったんですからね」
「・・・だよな!!」

アルは、ジークの言葉に多少の自信を持った。
何故、クローが自分たちのところに来てくれたのか、疑問は残る。
でも、少なくともクローは自分たちを選んでくれた。
今は、クローが心を開いてくれるのを待っていればいいのだ。


そう、昔のアルのように。


暫くすると、クローがアルたちの席の後ろから戻ってきた。
ちょっと元気がなさそうだが、先ほどの深刻そうな顔より、ずっと良い。

「クロー、大丈夫か?」
「・・・うん」
「無理しないでくださいね」
「はい。・・・でも。
いつかは、お話させていただきますから。
・・・待っててくださいますか?」
「・・・!!当たり前だろ?」

クローの意を決した言葉を聞いて、アルは思わず
力強く答えた。
クローは、ほっとしたように微笑んだ。
すると。



“アムーゼルー、アムーゼルに到着ー・・・”



「お、もう着くっぽいな」
「そうらしいですね。2人とも、
ちゃんと荷物を持って、忘れ物がないようにしてくださいね〜」
「はい」
「分かってるって」

アルとクローは、それぞれ返事をすると
各自持ってきた荷物を持って、『アムーゼル』に着くのを待った。





予感は、あった。
何より、自分自身が異変を感じていたのだから。



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